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岐阜地方裁判所 昭和57年(ヨ)28号 決定

申請人 宮内太蔵

被申請人 社団法人岐阜精神病院

主文

申請人の本件仮処分申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

一  本件申請の趣旨及び申請の理由は別紙仮処分申請書(写)記載のとおりであり、これに対する被申請人の答弁は別紙答弁書(写)及び昭和五七年三月九日付準備書面(写)記載のとおりである。

二  申請人は、右のとおり、申請人の被申請人に対する給与請求権のうち、当庁昭和五四年(ヨ)第一七六号仮の地位を定める仮処分申請事件(以下第一次仮処分という)及び同五六年(ヨ)第六四号給料差額等仮払い仮処分申請事件(以下第二次仮処分という)の各仮処分決定により給付を命じられた給与のその後における上昇分、即ち昭和五六年四月から同年一二月までの間の月給増額分合計二一万二〇二二円及び昭和五七年以降本案判決の確定に至るまで毎月二万三五五六円の割合による月給増額分、並びに昭和五六年の上期及び下期の賞与金一八五万〇一六三円の仮払いを求めるものであるので、まず、その保全の必要性について検討する。

そもそも、賃金等の仮払を命ずる仮処分の目的は、解雇された労働者が解雇の効力を争う場合、使用者が解雇を理由に労働者に対する賃金の支払を拒んでいる結果、労働者及びその家族の経済生活が当該労働者において本案訴訟を維持し、その判決の確定を待つことができないほどに危殆に瀕した事態に立ち至つているか、その具体的な発生のおそれのある場合に、これを避けるに必要な金額の仮払いを得させることにあり、労働者に対し他の従業員と同等の生活を保障することにあるものではない。したがつて、労働者がすでに賃金仮払い仮処分により賃金相当額、賃金増額改定に相応する追加分及び賞与の一部等の仮払いを受けて一応の生活水準を維持していると認められるような場合には、その後に他の解雇されない従業員と使用者との間で再度賃金増額等の協定が成立したというだけでは直ちに右増額分等についての仮払い仮処分の必要性を肯定するのは相当でなく、改めて増額分等の支払を求める部分についての必要性を慎重に判断すべきであり、その際には、すでになされた仮処分の発令時以降申請人において増額分等の仮処分を受けなければならないような家庭経済生活上の追加的事情の発生があつたか否か等を中心に判断するのが相当である。

そこで、本件について検討するに、本件記録によれば、申請人方は申請人とその妻照子、長女洋子の三人家族であること、申請人は第一次及び第二次仮処分決定によつて毎月合計二四万七七四二円の仮払いを受けており、妻照子は小学校の教員として勤務し、昭和五六年度において合計四五一万九〇〇〇円(手取額)の収入を得ており、したがつて申請人夫婦としては今後年額七四九万一九〇四円以上の収入が得られるものであること、長女洋子は現在東邦大学医学部五年生で、申請人夫婦と別居しており、そのため長女洋子に対し、昭和五八年三月までは東京での生活費として月額約一五万円、大学授業料年額六〇万円のほか書籍代等約三〇〇万円(なお、昭和五六年度は合計二八二万円)が必要であること、ところで岐阜市における標準生計費(昭和五六年四月時点)は月額一三万三六八八円、年額にして一六〇万四二五五円であることが疎明される。以上の事実によれば、申請人夫婦としては、その収入から長女洋子への仕送り分を控除し、さらに昭和五四年五月以降の物価の上昇による生計費の増加を考慮してもなお、前記収入のみで右標準を大幅に上回る生活水準を維持し得ることが推認できる。また申請人は昭和五六年度の生計費として、とくに訴訟代理人報酬五五万円、自宅敷地の石垣等の補修材料費六〇万七三二五円、固定資産税二〇万六二〇〇円、電話工事代金四万三三五六円、社会保険労務士会会費二万五二〇〇円、冠婚葬祭費等五六万六〇〇〇円、妻照子の交通費及び図書費等五二万五〇〇〇円、合計二五二万三〇八一円の支出を要したことをもつて本件仮処分申請の理由としているが、右各項目中には、今後継続して支出する必要のないものもあり、したがつて今後も右合計額と同額の支出が必要であるとの疎明は十分であるとはいえないし、かりに、今後右同額の支出が必要であるとしても、申請人夫婦の前記収入によつて十分まかない得るものであることは明らかである。

なお、申請人は、長女洋子の大学入学の際、従兄の宮内民男から大学に対する寄付金の一部の支払のため四四〇万円を借り受けたが、そのうち一九〇万円が未返済であり、これを昭和五七年度中に返済しなければならない旨主張している。しかしながら、本件記録によれば、第二次仮処分決定においては、第二次仮処分申請のうち昭和五四年度・同五五年度の賞与分の仮払いの申請に対し、とくに右宮内民男からの借入金の残金四〇〇万円の返済資金として、右四〇〇万円から申請人名義の定期預金五〇万円及び妻照子名義の定期預金九〇万円を差し引いた二六〇万円について仮払いを認めたものであるところ、申請人はそのうち二一〇万円のみ返済したものであること、昭和五六年度における申請人夫婦の収入は、右二六〇万円を差し引いても合計七八八万二七四四円(手取額)にのぼり、他方申請人が述べる支出は前記のとおり長女洋子に対する仕送り二八二万円及び生計費の一部二五二万三〇八一円の合計五三四万三〇八一円にすぎないことが疎明される。したがつて、前記岐阜市の標準生計費に照らし、申請人夫婦は、二六〇万円の仮払いを差し引いた収入のみで標準を上回る生活を維持することができたものと推認でき、右二六〇万円及び定期預金一四〇万円によつて宮内民男からの借入金を完済することができたものと推認できる。そして、申請人夫婦において右借入金を完済し得なかつた特別の事情についての疎明はない。したがつて、右借入金のうち一九〇万円がなお未払いで、これを返済する必要があることは、保全の必要性の判断にあたつては斟酌すべき事情とはいい難い。(なお、かりにこれを斟酌するとしても、申請人は、右借入金に充当し得る資産として前記合計一四〇万円の定期預金を有しているのであるから、前記のとおりの申請人夫婦の今後の収入のみによつて右借入金残金一九〇万円から右定期預金一四〇万円を差し引いた五〇万円を支払い得るものと認められる。)

してみると、本件賃金増額分及び賞与の支払いを今直ちに受けなければ、申請人の生活が困窮を来たし、著しい損害を蒙るとは認められず、その他本件記録に顕われた一切の事情を考慮しても、右請求の必要性を認めることはできない。

三  以上の次第であつて、申請人の本件申請は保全の必要性の疎明がなく、保証をもつて疎明に代えることも相当でないから、その余の点を判断するまでもなく、本件申請は理由がない。

よつて申請費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 秋元隆男 松永眞明 筏津順子)

(別紙)

仮処分申請書

申請の趣旨

一 被申請人は、岐阜地方裁判所昭和五四年(ヨ)第一七六号仮の地位を定める仮処分事件、及び同庁昭和五六年(ヨ)第六四号給料差額等仮払仮処分事件の各仮処分決定により、申請人に対して給付を命ぜられた金員のほかに、申請人に対し金二〇六万二一八五円及び本案判決の確定に至るまで、昭和五七年一月から毎月末日限り金二万三五五八円の割合による金員を仮に支払え。

二 申請費用は、被申請人の負担とする。

との裁判を求める。

申請の理由

一 申請の理由は、つぎに追加するほかは、申請の趣旨掲記の別紙「仮処分決定」(一)(貴庁昭和五四年(ヨ)第一七六号事件のもの)、(二)(貴庁昭和五六年(ヨ)第六四号事件のもの)の各申請の理由記載のとおりである。

二 ところで、右両仮処分後、被申請人病院の他の従業員に対しては、昭和五六年四月に昇給が行われ、上期及び下期に賞与も支給された。

三 一方、申請人側の事情はこれまでとほとんど変つていないが、とりわけ近時の諸物価の高騰により申請人の生活は著しく圧迫をうけている。

四 しかるに、本案訴訟は、なおもその後係属しており、次回口答弁論期日は、昭和五七年三月一〇日に指定されているが、この期日に終結に至る見通しは到底たてられない。

五 よつて、申請人は、被申請人に対し、別紙計算書及び基本給増額分計算書のとおり昭和五六年の上期及び下期の賞与金一八五万〇一六三円と、昭和五六年四月から同年一二月までの間の基本給等の増額分計金二一万二〇二二円、以上総計金二〇六万二一八五円及び昭和五七年一月以降本案判決の確定に至るまで、毎月末日限り昇給分にあたる一ケ月金二万三五五八円の割合による金員を仮に支払うことを求める。

別紙(一)、(二)〈省略〉

基本給等増額分計算書

(計算式)

昭和56年度 基本給(4月1日より改訂実施)

(本給+第二基本給)×アツプ率+アツプ額=申請人の改訂基本給差額(月額)

(272,760円+23,200円)×0.0549+(1460円〔新課長手当分〕+1450円〔新業務手当分〕+4,400円〔定期昇給分〕)=23,558円(総アツプ月額)

23,558円×9(月)=212,022円(56年4月から同年12月までの改訂差額)

賞与計算書

(計算式)

(本給+第二基本給+役付手当+業務手当)×係数α+加算額β=申請人の賞与額

1、昭和56年度 夏期賞与

(293,400円(新本給)+23,200円(第二基本給)+16,060円(新課長手当)+6050円(新業務手当))×2.3+30,000円=809,033円

2、昭和56年度年末賞与

(293,400円+23,200円+16,060円+6,050円)×3+25,000円=1041,130円

(別紙)

答弁書

第一申請の趣旨に対する答弁

申請人の申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

との裁判を求める。

第二申請の理由に対する答弁

一 第一項について

申請人が引用する岐阜地方裁判所昭和五四年(ヨ)第一七六号事件(以下第一次仮処分という)及び同裁判所昭和五六年(ヨ)第六四号事件(以下第二次仮処分という)の「申請の理由」に対する答弁は、病院が第一次及び第二次仮処分事件において提出した「答弁書」の「答弁の理由」及び「申請の理由に対する答弁」記載のとおりである。

二 第二項は認める。

三 第三項は否認する。

申請人は第一次仮処分事件において、保全の必要性として住宅ローンを毎月返済しなければならない事情を述べたてていたのであるが、右事件において申請人が提出した疎明方法によれば、右住宅ローンの返済は昭和五五年八月をもつて完了しており、これにより同年九月以降は、六月と一二月を除き毎月約四万一、〇〇〇円、六月と一二月は各約二〇万三、〇〇〇円、年間合計八一万六、〇〇〇円程度の支出減となつている(疎乙第一号証)。

のみならず申請人は第二次仮処分により一時に三〇〇万円近くの金員を取得し、また毎月病院より二四万七、七四二円もの仮払いを受けているのである。

右各事情に照らせば、申請人の生活事情は格段に向上していることはあつても圧迫を受けることはあり得ないのである。

四 第四項は認める。

五 第五項は争う。

第三病院の主張

一 被保全権利の不存在――その一(従業員たる地位の不存在)

(一) はじめに

第一次仮処分のような地位保全仮処分命令が発せられた後に、更に賃金仮払等の仮処分申請がなされた場合も、裁判所は雇用関係の存否の判断に際し、先行の仮処分に拘束されるものでないことは、大多数の判例の説示するところである(神戸地判昭和三三年一月二五日労民集九巻一号九一頁東京地決昭和三五年四月八日労民集一一巻二号三一四頁等、学説として中川兼子「仮差押仮処分」青林書院新社刊実務法律大系8四五〇頁以下)。

本件仮処分申請は、一時金等の仮払いを命ずる仮処分であり、いうまでもなく、満足的(断行)仮処分の典型的な事例であつて、いつたん支払つてしまえば、後日、本案訴訟において病院が勝訴しても、原状回復が不能または著しく困難となる恐れが極めて強いのである。しかして第一次仮処分は、病院に対し、解雇の有効性に関する主張と疎明を尽すための口頭弁論を開く等十分な機会を与えないままなされたものであつて、事実認定上、判断上の重大な誤りを犯しており、病院は、現在これを不服として異議申立をなし、係争中である(岐阜地方裁判所昭和五四年(モ)第三九一号)が、右審理によつて第一次仮処分が取消される可能性が極めて高い状況にある。

かような事情が存する以上、本件審理に当たつては、第一次仮処分を当然の前提とすることは到底なし得ないのであり、以下に述べるような、病院が申請人に対してなした諭旨解雇(一次解雇)および予備的解雇の効力そのものについても、詳細かつ充分な審理が尽されるべきである。特に予備的解雇は第一次仮処分後になされたものであり、第一次仮処分事件においては審理の対象には全くなつていないのであるから、本件審理に当つては、口頭弁論を開き充分な主張・疎明の機会が与えられるべきである(後述のように、本件においては、申請人側に緊急に仮処分決定を求める保全の必要性が認められないのであるから、なお更慎重な審理が尽されるべきである)。

(二) 一次解雇について

病院は申請人に対して、就業規則四九、五〇条に基づき、昭和五四年三月五日諭旨退職処分の申し渡しをなし、同年四月六日解雇の意思表示をなした(一次解雇)。

右一次解雇に至るまでの経過および解雇事由の詳細については、第一次仮処分に対する異議事件(御庁昭和五四年(モ)第三九一号)における病院の準備書面(二)、同(三)、同(四)記載のとおりである。

要するに、申請人の右懲戒事由は、すべて申請人の病院に対する一連の常軌を逸した敵対行動(従業員として使用者との間の雇傭契約の基礎となる信頼関係を根底から否定し破壊する行動)にほかならないのである。申請人のかかる行動は、すべて申請人の被害妄想的邪推に基づくものである。それらの行動の目標は、もつぱら申請人が妄想の末、自からを陥しいれる「策謀家」の一派と信ずるに至つた各従業員らに向けられ、その業務の内容に不必要に立ち入つたり、あるいは現実には何ら問題とする余地もないのに、妄想の故かあるいは故意によるものか、これらの者の業務上の行動に問題があるかのように考えてその攻撃材料さがしのために就業時間中自己の責務を放置してまでも「調査」まがいの行動に出たり、自からの意見に反対する者に対し徹底的に嫌がらせを行つたり、果ては理事者をはじめ病院の部外者に対してまでも病院が「田中元課長一派」なるものに「特別庇護」を与えているとか、あたかも自分が田中業務課長退職問題の件で「報復」をうけているかの如き前記妄想のみを根拠とする事実無根の事柄を記載したぼう大な文書を次々と書き、あるいは病院の機械でコピーしては送りつけ、病院の理事者らを不当に中傷誹謗するようになり、その程度は次第に常人の行動とは認め難いほどとなつたのである。かような申請人の常軌を逸した故なき病院側への敵対行動について、理事者らは、当初は申請人本人がいつかはその邪念を払つて真実をみつめてくれるであろうことを信じてこれを暫時黙過してきたが、少しづつその程度が高まるにつれ、今度は申請人に対し理を尽してその非を諭し、他人の業務への口出し等を厳に禁じたりもしたのであるが、申請人は反省しないばかりか、ことさらこれを曲解し、反発するようになつたのである。

かような申請人の妄想のみを根拠とした病院に対する異常なまでの敵対行動とそれを背景とした部下、同僚等に対する執拗な業務上、業務外の嫌がらせ的行動は、申請人と病院との間の継続的契約関係たる労働契約の基礎となるべき「信頼関係」を、もつぱら申請人の責に基づく事由により申請人自身が、根底から破壊したものであり、従つて本件「諭旨退職」処分の合理性は明らかと言うべきである(疎乙第二号証、同第三号証)。

なお、申請人に対する右解雇は、病院の全従業員が等しくこれを支持するところであり、労働組合もまた一致してその正当性を肯定し、病院への全面的な協力を決議してさえいるのである(疎乙第四号証の一、二)。

従つて、もともと申請人は右一次解雇によつて病院の従業員としての地位を失つているのであるから、本件仮処分申請は被保全権利を欠くものであつて、却下を免れないのである。

(三) 予備的解雇について

仮に百歩を譲り、一次解雇が無効であるとしても、病院は、昭和五四年一二月二六日付、同月二七日到達の書留内容証明郵便(疎乙第五号証の一、二)をもつて、申請人に対し、就業規則第一五条に基づき、昭和五五年一月三一日付をもつて予備的に解雇する旨の意思表示をなしており、申請人は右時点において病院従業員の地位を喪失している。

右予備的解雇の事由および解雇手続の詳細については、第一次仮処分に対する異議事件(御庁昭和五四年(モ)第三九一号)の病院の準備書面(六)記載のとおりである。なお同準備書面三頁記載の理事に対する膨大な誹謗・中傷文書の全体は疎乙第六号証の写真に示すとおりである。

要するに、昭和五〇年以降繰り返された申請人の常軌を逸した病院に対する敵対行動(その典型は理事者に対する前記の如き膨大な誹謗・中傷文書の配付行為等)は、従業員として職場に適応する能力に著しく欠け、かつ使用者との間の雇傭契約の基礎となる信頼関係を根底から否定し破壊する行為であつて、就業規則第一五条第一号に該当することは明らかである(疎乙第七号証、同第三号証)。

従つていずれにしても、申請人は右予備的解雇によつて病院の従業員としての地位を失つているのであるから、本件仮処分申請は被保全権利を欠くものであつて、却下を免れないのである。

なお、右予備的解雇は、前述の如く、第一次仮処分事件の審理の対象となつていなかつたのであるから、本件においては口頭弁論を開き充分な審理が尽されるべきである。

二 被保全権利の不存在――その二(昇給額、賞与額の未確定)

(一) 本来、賃金の昇給額、あるいは一時金の額は、雇傭契約の内容をなすものであるところから、これが確定するためには当然に従業員と使用者との合意ないし、使用者の意思表示を必要とすることは多言を要しない。

ところで病院は申請人に対し、申請人主張の如き昇給額及び一時金の各支給の意思表示をなしたことがないのであるから申請人主張の具体的請求権が発生するに由なきものといわなければならない。この点につき、富山県教組事件についての富山地裁昭和四七・七・二一判決(判時六八九号一一一頁)は、成績査定(五段階の)をともなう勤勉手当について「任命権者が当該職員につき右五段階の成績率のうち、いづれに該当するかを具体的に決定し、その支給額を算定しない以上未だ当該職員は確定債権としてこれを取得し得ないものというべきである」として勤勉手当支給額の差額支払請求を明確に棄却していることが参照されねばならない。更に右のように昇給等が使用者の意思表示により初めて実現するとしている判例として板付基地事件(福岡高裁昭三八・三・七判決労民集一四・二・三九二)、丸住製紙事件(高松高裁昭四六・二・二五判決労民集二二・一・八七)等が存在するのである。

(二) 病院の場合定期昇給は給与規定二〇条の定めに従い辞令簿によつて決定し、期末手当(賞与)は、同一九条の定めに従い、理事長の決裁を得た上支給することとなつている(疎乙第一二号証)。

しかして病院は申請人に対し、辞令簿によつて定期昇給を決定したこともなく、期末手当について理事長の決裁をなしたこともないのである。

(三) 従つて病院が申請人について、その主張する一時金等の各支給の意思表示をしたことがないのであるから、先づこの点において申請人の主張は失当といわざるを得ない。

三 申請人の主張する金額の不当性

(一) 申請人は仮処分申請書添付「賞与計算書」及び「基本給等増額分計算書」において勝手な計算をしている。

そこで仮に百歩を譲り、申請人の定期昇給、賞与について仮定的に計算すれば次のとおりである(疎乙第一二号証)。

(二) 昇給額

第一次仮処分及び第二次仮処分によつて認められた申請人の仮払金は合計金二四万七、七四二円であるところ、右金額中には本給、第二基本給及び諸手当が含まれているものである。

一方昭和五六年四月の昇給率は、諸手当を含めて七・四二%(定期昇給分を含む)であつた。

従つて申請人の場合右仮払金を基準とすれば、その昇給額(定昇分を含む)は、一万八、三八二円となる(247742×0.0742=18,382)。しかるに前述のとおり病院の給与規定二〇条によれば定期昇給は辞令簿によつて決定されるものであるところ、申請人についてはこの決定がないから、定期昇給分四、四〇〇円は右昇給額から控除さるべきこととなる。

よつて結局申請人の昇給額を仮に算定すれば、一万三、九八二円(18,382-4400=13,982)となる。

(三) 賞与額

1 夏期手当

申請人の昭和五六年度夏期手当を仮に算出するとすれば、同年度の昇給額(右(二)の金額)を第一次、第二次仮処分の仮払金額に加えた金二六万一、七二四円が基礎となる。

この期の支給率は二・三ケ月プラス一律三万円であつた。

従つて申請人の夏期手当を仮に算出すれば、金六三万一、九六五円(261,724×2.3+30000=631,965)となる。

2 年末手当

申請人の基準額は右1で述べたとおり金二六万〇、五二八円である。

この期の支給率は三ケ月プラス一律二万五、〇〇〇円であつた。

従つて申請人の年末手当を仮に算出すれば、金八一万〇、一七二円(261,724×3+25000=810,172)となる。

四 保全の必要性の不存在

(一) 一般に賃金等の仮払いを命ずる仮処分は、満足的(断行)仮処分の典型的な事例であり、しかも一旦支払つてしまえば後日本案訴訟において債務者(使用者)が勝訴しても、原状回復が不能あるいは著しく困難となることが多いので、これを認容するためには高度の必要性を要するものとしなければならないのである。そして仮払いが求められている賃金等を過去の分と将来の分に分類すれば、過去の分については、前述のような満足的仮処分の性質に照らして、一般的に保全の必要性の限界を逸脱しているものと解するのが正当である。さらに賃金等を一定の期日に一定の金額が支払われる本来的な意味における賃金と、支払期日も金額も特定されていない臨時的な給与(本件の一時金の仮払請求がこれに当たることは明白である)とに分類すれば、後者については一層右の理論が妥当するのである。

したがつて、学説は過去の賃金等、ことに少額のものや臨時的な性格を有するものの仮払いを求める仮処分について、保全の必要性を肯定することに懐疑的なものが多いのである。

例えば、労働関係民事行政裁判資料一二号一五六頁 新堂幸司「仮処分」経営法学全集一九巻一六六頁。今中道信「賃金、退職金支払の仮処分の必要性」実務民訴講座九巻三〇〇頁以下 中川善之助他編「仮差押、仮処分」実務法律体系八巻四五八頁

判例もまた次ぎのように圧倒的多数のものがこの種事案についての保全の必要性を否定しているのである。

(1) 一人あたり金六〇五円の公労委仲裁裁定による追加支給金

(東京高判昭和二五年一一月二八日労民集一巻六号一一四九頁)

(2) 一人あたり金七七二円の生産奨励金

(函館地決昭和二五年一二月二八日労民集一巻追録一二九八頁)

(3) 一人あたり金六二六円から金一七〇円の年次有給休暇請求による賃金カツト分

(仙台地決昭和二九年四月七日労民集五巻二号二一一頁)

(4) 一人あたり金九一、九八〇円から金三、七五〇円の退職金の残金

(浦和地判昭和三〇年一二月二七日労民集七巻一号二〇九頁)(東京高判昭和三一年九月二九日労民集七巻六号一一一五頁)

(5) 一人あたり金三八、〇〇〇円から金二一、〇〇〇円の給料の一カ月分の夏季手当

(岡山地決昭和三三年一一月二九日労民集九巻六号一〇四六頁)(広島高岡山支決昭和三四年四月三日労民集一〇巻二号四一八頁)

(6) 金三一、五六四円の休業手当

(東京地判昭和三三年一二月一九日労民集九巻六号一〇五〇頁)

(7) 一人あたり金三五、三七九円から金二九、六六二円の給料の一・四カ月分の越年資金

(広島地福山支決昭和三四年三月二三日労民集一〇巻二号四一二頁)

(8) ロツクアウト中の賃金カツト分(金額不詳)

(神戸地判昭和三四年一二月二六日労民集一〇巻六号一一五二頁)

(9) 一人あたり金六、九八一円から三、二五〇円の懲戒休職による休職期間一五日分の賃金

(福岡地判昭和三六年五月一九日労民集一二巻三号三四七頁)

(10) 一人あたり金三一六、二六〇円から金一四、〇四四円の時間外および深夜労働による割増賃金

(名古屋地決昭和三六年九月二五日労民集一二巻五号八三四頁)

(11) 一人あたり金一、八〇〇円程度の解雇申渡し以後、解雇の効力発生までの九日間の賃金

(名古屋地判昭和四〇年一一月一日労民集一六巻六号八九五頁)

(12) 夏季賞与金一七五、六〇〇円

(広島高決昭和四七年九月一八日判時六八三号一二五頁)

(13) 過去の昇給分あるいは一時金

(高知地決昭和五二年一二月二三日労経速報九七四号二〇頁)

(14) 過去の昇給分および一時金

(名古屋地決昭和五四年八月一日労経速報一〇二三号二一頁)

前記学説や判例によれば、本件昇給および一時金の仮払いを求める仮処分については、一般的に保全の必要性を否定することが正当であることは、もはや多言を用いずして明らかであろう。

なお、数次にわたる仮処分後の昇給差額一時金支払請求仮処分事件につき、その必要性が否定された最近の判例として、東京地裁(昭和五一年九月九日、昭和四九年(モ)第一二、七七六号)判決(判時八四三号一一四頁)及び東京高裁(昭和五三年六月二八日、昭和五二年(ウ)第八四〇号)判決(判時八九八号五四頁以下)名古屋高裁決昭和五五年二月一五日(判タ四一二号一一六頁)があることを付記しておく。

(二) 仮に百歩を譲り、右の一般論が容れられないと仮定しても、本件においては保全の必要性を否定すべき格別の事情が存するのである。

(1) 申請人の家庭は、申請人と妻の二人世帯であり、他に東京に下宿中の大学生の娘一人がいる。

岐阜県人事委員会の調査、算出によると、昭和五六年四月時点における岐阜市内二人世帯の標準生計費は月額一三万三、六八八円である(疎乙第八号証)。この統計資料によれば、昭和五六年四月以降の物価上昇等を考慮して、申請人の有利になるよう最大限に見積り、月間一割の生計費が増大するものとしても、申請人の月間生計費が一四万七、〇五六円を超えることはあり得ないところである。

一方、申請人は第一次及び第二次仮処分決定により、病院から月額二四万七、七四二円の仮払いを受けており(申請書添付の仮処分決定(一)、(二)参照)、又、申請人の妻は、現在岐阜市立芥見南小学校に教諭として勤務し、その教員としての勤務年数は昭和二四年以来、三四年間に及び、一ケ月当り平均四七万九、二一八円にのぼる収入(但し、賞与を含む)がある(疎乙第九号証)。

従つて、申請人夫婦二人の平均月収は、実に合計七二万六、九六〇円(年間合計八七二万三、五二〇円)にのぼり、前述の標準生計費の約五・四倍に達するのである。

申請人は疎甲第二号証において、娘の学費として年六〇万円、生計費として月一五万円が必要であるなどと陳述しているが、仮にそのとおりであるとしても、その負担額は年間二四〇万円にすぎず、前記申請人夫婦の収入によつて充分にまかない得るのである。

さらに申請人は第二次仮処分によつて一時に金二九九万〇、八四〇円にものぼる多額の仮払金を受領しており申請人一家の生活は格段にうるおつているのである。

従つて、この上さらに、申請人が本件において請求するような高額の金員の支払いを、本案判決を待たずして、仮処分によつてまで求めなければならないほどの緊急の必要性は全く存しないのであるから、本件申請は却下さるべきである。

なお申請人は疎甲第二号証の陳述書の(2)ないし(4)において訴訟に伴う代理人の報酬とか家の石垣等の補修補強あるいは冠婚葬祭及び主な交際費等の出費があるかの如く述べている。しかしながら、右陳述はいずれも具体的にどの程度の出費がどの程度の頻度で必要なのか等について明らかにしておらず極めて抽象的である。のみならず、右の如き種類の出費であれば、常識上、前述した申請人一家の年収の範囲内において充分まかない得るはずである。よつて申請人の右陳述によつても保全の必要性は全く認め難いのである。

(2) 申請人は、昭和五五年八月まで住宅ローンの返済をなしていたのであるが、右返済は同月をもつて終了している。このため同年九月以降は、六月と一二月を除き毎月約四万一、〇〇〇円、六月と一二月は各約二〇万三、〇〇〇円、年間合計八一万六、〇〇〇円程度の支出減となつており、この金額をそつくり生活費等にあてることができるようになつたのである(疎乙第一号証)。

かかる事情が、申請人の本件仮処分申請の保全の必要性を否定するものであることは明らかである。

(3) 申請人の本件仮処分申請のうち、昭和五六年度夏期賞与の請求は、病院の右賞与支給期後八ケ月以上経過してからなされたものであり、同じく昭和五六年度末賞与の請求は二ケ月以上経過してからなされたものである。また昭和五六年四月以降同年一二月分までの昇給差額の請求も一一ケ月ないし二ケ月以上経過してからなされたものである。

一般に、一時金については、その支給期後長期間にわたつて仮払いの申請等がなされなかつた場合には、少くともそれ以前の仮処分等の収入によつて右期間を現実に経過して来ているのであるから、特段の事情がない限り保全の必要性がないものと推認すべきである(同旨 名古屋地決昭和五五年二月一三日、同地裁昭和五四年(ヨ)第一六〇三号。この決定は支給期後六ケ月近く経過してからの仮払請求について、その請求額の三分の一弱についてのみ仮払いの必要性を認め、その余の請求を却下した。――疎乙第一〇号証)。

申請人夫婦の現在の収入の状況が極めて豊かであることについては、前記(1)で述べたとおりである。かように生活に何ら困窮もしていない申請人には、相当以前の賞与及び昇給差額について、本案判決を待たずして、仮処分によつてまで支払いを求めなければならないような緊急の必要性は全く存しないのであり、本件申請は却下を免れないのである。

なお、前述した、東京高判昭和五三年六月二八日(判時八九八号五四頁以下)は、賃金等の支払認容後の賃上分、年末、夏期一時金の仮払いの仮処分の必要性を否定したものである。また同じく高知地決昭和五二年一二月二三日(労経速報九七四号二〇頁)は、過去の昇給分あるいは一時金について保全の必要性を否定している。

(4) 申請人は、昭和五四年四月六日病院を解雇されて以後当然のことながら病院に対し労務を提供しておらず、充分な余暇がある。

一般に、解雇無効確認の本案訴訟係属中といえども、その当事者は、働くための外的条件が満される以上、アルバイト等に就労し自己及び家族の生活維持に努めることが可能であり、それでもなお緊急の必要がある場合に賃金仮払仮処分の必要性が肯定されるというべきであつて、条件が満されるにも拘らず自らの意思で就労せず、あえて緊急状態を作出しているような場合にあつては、その事情は仮処分の必要性判断の際に消極事情として充分斟酌されるべきである(同旨 名古屋地決昭和五五年一一月六日、同地裁昭和五五年(ヨ)第一〇九〇号。疎乙第一一号証)。

申請人は、社会保険労務士の資格を有しており、現に社会保険労務士会にも所属しているのであるから、真実生活に困窮しているのであれば、右資格を活用したアルバイト等をなすことが極めて容易な立場にある。しかしながら申請人は右のような行動に出ていない。このことは、申請人が前記(1)のような高収入を保障され、生活が安定していて、病院からさらに仮払いを受けなければならないような必要性が全くないことを示す一証左にほかならない。

のみならず、申請人があり余る余暇を全く活用することなく、アルバイト等に就労しないで自からの収入を減じていることは、自からあえて緊急状態を作出して、これを病院の負担に転嫁せんとするものにほかならず、その事情は保全の必要性判断のための消極事情として充分斟酌さるべきである。

(5) なお第二次仮処分は、申請人とその妻子の収入と支出及び定期預金の状況を考慮したうえ、賞与については、申請人が申請外宮内民男から借り入れた借金の返済資金不足分二六〇万円についてのみ保全の必要性を認め病院に仮払いを命じている(仮処分申請書添付「仮処分決定(二)」参照)。従つて申請人は右第二次仮処分によつて得た金員(金二六〇万円)と定期預金(金一四〇万円)とによつて右宮内民男への借入金(金四〇〇万円)は全て返済することが出来たはずである。しかるに申請人は疎甲第二号証において自分と妻の定期預金一四〇万円は残したいとの勝手な理由をつけて右宮内民男に対する借入金がなお一九〇万円も未払いになつているなどと陳述しているが、かような陳述は到底措信し難いところである。仮にそれが事実としても申請人は第二次仮処分の金額によつて充分返済し得る借金をわざわざ残して本件申請に及んだものであり、右借入金の残存はルーズな金銭処理により自から招いた消極的事情であつて、これを保全の必要性の一内容として病院に支払い負担増を強いることは信義則上も許されないものと言わねばならないのである(申請人の陳述によれば二六〇万円のうち二一〇万円しか返済にあてておらず五〇万円は他へ流用し、定期預金はこれを温存しているとのことである)。

のみならず、少くとも申請人一家にはなお一四〇万円もの定期預金が残存していることは申請人の自認するところであるから、申請人の生計にはそれだけ余裕があり、申請人が求めるような高額な賞与について本案判決を待たずして、仮処分によつてまで支払いを求めなければならないような緊急の必要性は全く存しないことが明らかである。

(6) 以上述べた如き申請人について存する諸種の格別の事情を総合すれば、申請人には第一次及び第二次仮処分決定に基づく仮払金額を超える金員の支払いを、本案判決を待たずして、仮処分によつてまで求めなければならないほどの緊急の必要性は存しないのである。

疎明方法〈省略〉

(別紙)

準備書面

一、申請人は、疎甲第三号証の一、二以下疎甲第七号証までを提出し、本件仮処分の保全の必要性の疎明を補強せんとしている。しかしながら、右各疎明資料によれば、かえつて申請人の現在の生活が如何に裕福であり、従つて本件仮処分によつて本案判決前に一時金等の仮払いを受ける保全の必要性がないことが明らかとなつたのである。

二、疎甲第三号証の一、二(申請人の妻の報告書)によれば、申請人の妻は昭和五六年中に、税込み合計金五八三万七、〇一八円、手取り四五一万九、〇〇〇円もの収入を得ているとのことであり、我国の平均的サラリーマン家族の収入としては多い部類に属することは明らかであり、申請人一家は申請人の妻の収入のみでも充分に生計を維持して行けるはずである。

のみならず、申請人自身は第一次及び第二次仮処分によつて病院より現在毎月二四万七、七四二円の仮払いを得ており、右妻の収入と合せれば、申請人一家の収入は格段に多いことが明らかなのである。

三、申請人は疎甲第四、五号証によつて、昭和五六年中の経費の支出総額なるものを疎明せんとしている。しかしながら右の一覧表はいずれも何らの裏付け資料もない申請人の一方的陳述にすぎず、にわかには措信し難い内容のものである。

のみならず仮に右疎甲第四、五号証の金額を前提として考えても、申請人一家の昭和五六年中の総収入は合計九九五万七、三四四円(但しこの金額は申請人の妻の交通費と雑費五二万五、〇〇〇円を控除した後のものである)にも達しており、右収入によつて充分まかない得たはずである。しかも申請人は疎甲第二号証で述べているように別に貯金として一四〇万円もの蓄えがあるのであり、生計費も充分まかない得たことは明らかである(疎乙第一三号証)。

四、疎甲第四号証には宮内民夫よりの借入金返済額として二一〇万円が計上されているが、これはすでに第二次仮処分の仮払金で全額返済ずみとなるべきものである。本件仮処分申請書添付の第二次仮処分の理由中からも明らかであるが、第二次仮処分は右宮内民夫への借金の返済金の内、申請人が有する貯金の額を控除した残りの金二六〇万円についてのみ保全の必要性を認めており、第二次仮処分はこの仮払金と預金によつて宮内民夫への借金の返済を申請人が実行することを前提にのみ保全の必要性を認めているのである。しかるに申請人は、第二次仮処分の仮払金を受けた後、故意に宮内民夫への借金の返済をなさず、仮払金の一部五〇万円を他へ流用したか預金にでもしたようであり、また預金についても一銭も支出しようとしなかつた(疎甲第二号証)。かような事情の下にあつては、申請人が再び宮内民夫からの借入金の返済を本件仮処分の保全の必要性の一事由となすことは、信義則上も許されないことといわなければならないのである。

五、申請人は疎甲第四、五号証において冠婚葬祭費として五六万六、〇〇〇円も支出したなどとしている。しかしながら我国の一般的なこの種慣行を考慮しても、申請人一家の冠婚葬祭費としては右金額は多額に過ぎ、到底措信し難いところである。仮に事実であるとすれば、申請人は病院から仮払金を受け得る立場にあることを良いことに、ことさら常識を越えるこの種支出をなしたものと言わなければならず、かような種類の支出(本当に生活が苦しければ、一番最初に切りつめなければならぬ支出)の大きさをもつて本件仮処分の保全の必要性の一事由とはなし得ないのである。

六、このほか疎甲第七号証の申請人の陳述によつても、現在の申請人一家の収入が前述のとおり極めて多いのであるから、結局申請人が本案判決を待たずしてその申請にかかるような多額の仮払いを得なければならない保全の必要性は全く存しないのである。

以上

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